その8…「人権侵害と擁護」

 人権尊重のまちづくりのための条例制定に向けた市民委員会議が、8月から開かれた。私も出席している。1回目は自由意見交換とのことで、私からは部落差別による人権侵害事例を3つ報告した。一つは、同和地区から引越した人がその先で差別落書きを書かれた事例。二つめは、同和地区に引越して来た人が就職差別を受けた事例。三つめは、部落出身者であることを知らされず育ち結婚差別を受けた事例である。いずれもこの5年の間の八尾での出来事だ。その後、障害者、外国人、子どもなどの人権状況が他の委員から出された。ある委員は、「このように人権侵害があることに驚いた。しかし、なぜ公的な相談機関にあがってこないのだろう」と、驚きと疑問を述べられた。

 1993年の総務庁調査では、同和地区住民の33.2%が部落差別体験を持っている。その内、相手に抗議した人は20.2%、黙って我慢した人は46.6%で、公的な機関へ相談した人は僅か4.4%しかいなかった。地区外の意識調査でも、もし人権を侵害された場合「公的な機関に相談する」と答えた人は12.8%しかいなかった。日本では、人権侵害を受けても公機関に訴えて出る人はまだまだ少ない。セカンド・レイプという言葉があるように、人権侵害体験を外に訴え出ることは更なる負担を伴うことでもある。ところが世の中には、性暴力に「女性の方にも隙があったからじゃ」と言う人もいれば、差別落書きに「いたずらだから」とか「消せば済む話し」と片付ける人もいる。前述の落書きをされた方は、誰に告げること無く仕事を辞め引越していったのである。共感されにくい周囲の眼差しが、告発を妨げているとも言える。

 いま、日本の人権状況は急速に変わろうとしている。児童虐待、男女共同参画、セクシャル・ハラスメント、人権を守るための法律や方策が次々と出てきた。人権擁護施策審議会では、人権救済の審議が進められている。そこでは、差別落書きのような従来では対応できなかった人権侵害も視野に入っている。基本的な条例だけでなく、子どもの権利や女性の権利、高齢者や外国人への入居拒否など、個別の人権課題でも条例で対応している自治体も出ている。もちろんそこには、人権の社会を求める様々な市民の動きがあるからに他ならない。

さて、八尾市はこの人権の社会づくりにどう参加していくのであろう。八尾市全体の人権意識が試されているとも言える。先に紹介した委員は、こうも言った。「同和問題や女性問題など、共感性を持ちにくい分野こそ大切なのでは」、と。

            (市同促:笠原)

back.gif (9484 バイト)

home1.gif (3010 バイト)