バスによるまちづくり
〜交通バリアフリー先進都市金沢見てある記〜
道野 隆
私が勤めている会社(東陽運輸)では、部落解放同盟西郡支部の要請を受け、昨年より「西郡ふれあいサービス」を始めた。地域の巡回バスとして、高齢者、障害者に喜ばれている。本年11月から交通バリアフリー法が施行されたが、交通弱者の問題を企業も積極的に取組んでいかなければと考えている。そこで先般、コミュニティバスの先進地とされる金沢市を訪れた。
「ふらっとバス」にふらっと乗った!
金沢市が運輸省の補助事業としてはじめている「オムニバスタウン事業」。13項目の施策をかかげ、ひと、環境にやさしいまちづくりを宣言し推進してきている。そのひとつに全国的に有名なのがこの「ふらっとバス」の運行。利用料金は100円。細街路を走行できるよう内輪差の小さい小型ノンステップ車である。ワイドなドアに、電動リフトでなく跳ね上げ式のステップは車椅子での乗り降りに便利だ。また車内前部には、車椅子のタイヤをはさみ込む固定装置があり車椅子の方が単独でも脱着が可能なしくみになっている。何より驚いたのは、走行ルート。裏通りしか走っていない。なおかつバス停は200メートルごとにまさに民家の軒下あたりにおいてあり、市民の身近かな存在となっている。ダイヤも15分ごとで少し待てばバスが来る。だいたい1ルート40分ぐらいで巡回できる。
ふらっとバス導入の目的のひとつに高齢者が買いものや病院に行ったりする足の確保がある。今年3月に運行を開始した菊川ルートの沿線は市内でも高齢者比率が高い新堅町、菊川両校下を通る。説明にあたってくれた金沢市都市政策部長は「市民の日常的な足を確保する事が、市の中心部の活性化にもつながった。年間20万人が利用してくれています。」と胸をはる。
ドライバーの応対も乗客と密接でカーブを曲がるたびに「左に曲がります。」「止まります。」といちいち呼びかけてくれる。ちょっとしたことだが、心の準備が事前に行なえバス車内の至る所にある握り棒をしっかり握り姿勢を支えることができる。
まちづくりの一環としてバスが走る
金沢市は藩政期に形成された複雑な小道や町並みを戦災に遭わず今も残す町。昔、前田藩主が何処からも城を攻めにくいよう複雑で細い裏通りを巡らせてある。それゆえ、裏通りを如何にバスを通すか?という事が便利な交通を考える上での課題。溝に蓋をして道路幅を広げたり、歩行者専用道路の用途を変更したり、市民と一体となってルートづくりをした工夫が随所で見られる。なかでも、横安江町商店街ではアーケードの下をバスが走り、バス停もある。商店街の振興にも一役買っているようだ。
役割分担のなかで
どうしても、「ふらっとバス」ばかりの話題になるが、金沢のバリアフリーの取り組みはこれだけではない。公共交通の拡充ということで、従来路線バスのスピードアップ化を図るべく交差点の改良、バス専用レーンの導入。全車ノンステップバス化。通勤渋滞を防ぐ事もかねて、パークライドを新設し表通り(広い道路)の取り組みも活発におこなっている。また、高齢者や、障害者など公共交通機関に乗車しにくい人を対象にST(スペシャルトランスポート)として「メルシーキャブ」を運行している。ドアツードアのサービスで、これまた多くの市民が利用していると聞いて驚きだ。西郡での試みを行政が先取りしている。車輌は金沢市が買い取り、運行はボランティアのドライバーを募集し、現在3台が運行中だ。これら路線バスや、ふらっとバス(コミュニティバス)、メルシーキヤブ(ST)が役割を分担し相互に補完しあって誰もが利用しやすい都市交通を形成しているのだ。
訪問を終えて
今回の視察計13名の大所帯。金沢市では今、全国各地から行政・議員団の視察が押し寄せ、この日だけでも5つの視察・ヒアリングをこなしていた。短時間ではあったが意義ある中味であった。これに懲りず次回は、バリアフリー先進地、欧州の視察をしたいと考えている。私の数少ない運輸省の知人の紹介で、日本のバリアフリー法の原案になったイギリスの「障害者、高齢者に関する交通政策法」「DDA法」を策定した環境・地域・交通省のMSアン、フライさんのご案内で欧州各地を視察できるというのだ。「ふれあいサービス」をおこなっているイギリスのダイアル、ア、ランド(STS)やスエーデン、ストックホルム県のSTサービス部も訪問できる予定。予算は少々お高いようだが、同行を希望される方は大歓迎。交通バリアフリー社会への模索をつづけたい。