昨年11月「人権教育及び人権啓発の推進に関する法律」が制定されました。この法律は、人権教育・啓発の推進について国、地方公共団体、国民の責務と必要な措置を定めたものです。もとより地方自治体では、かねてより人権教育・啓発の推進を行ってきたのですが、ようやく法律として位置付けられたと言えます。
さて、今後行政は、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて多様な学習機会を提供していかなければならないのですが、人権教育・啓発の推進には学びの主体づくりが重要と言えます。すでに八尾市同和対策協議会の意見具申(昭和60年)では「人権意識は市民が主体的に取組んではじめてみずからのものになる」とし、今後における啓発対策は市民が主体となるべきことを示してきました。そこで学びの主体作りとして、二つの市民活動を紹介したいと思います。『じんけん楽習塾』は、八尾市同和事業促進協議会が98年からはじめた人権ワークショップ講座です。ワークショップは参加(体験)型学習とも言い、様々なアクティビティを通じて学習者が相互に学び合っていきます。従来、人権学習は堅苦しいと思われがちでしたが、参加型学習は参加者の“きづき”や“体験”から学ぶことを基本としますので、主体的に学ぶこができます。近年、この学習方法を取り入れた人権研修が少しずつ増えていますが、参加層や学習テーマに応じたアクティビティを用意し学習を進行できるファシリテーターの養成も必要となっています。
『じんけん楽習塾』は、この参加型学習を年12回の連続講座として開いています。まったくの公開市民講座としてはじめましたので、「本当に参加者があるのか」「12回も続けられるのか」と心配しましたが、年々参加者が広がり、他市や遠く他県からの参加も増えています。その理由を振り返ってみますと、連続講座であることが大きいと思います。年間12回、毎年続けていますので様々な人権課題をテーマにすることが出来ますし、たくさんのファシリテーターから色んなアクティビティを体験することも出来ます。そんなことから、人権を日常的に学びたい人も、ファシリテーターをめざしたい人も一緒に学べます。参加層も、同和地区出身者や在日コリアン、児童虐待に取組む方、学校の先生や自治体の人権啓発担当者、女性も男性も学生もと、生活場所や立場や関心もそれぞれ違う者が集まっていますので、その日のテーマに関係なく多様に人権が学べます。また、「人との出会いが楽しい」と言う人も多く、学習者のネットワークが出来ていっています。 こうした参加者を主体とした学習活動を続けて3年になりましたが、そこから更に新しい活動が生まれています。まず、企画や講師依頼などを講座生の運営で進められるようになりました。また、12回の講座の他にも、フィールドワークや聞き取り、自主的な学習会など、講座生が「学びたい!」と思ったことをドンドン実現していっています。更に、PTAなど各種団体での人権研修でファシリテーターとして実践する人も出てきています。もう一つ、この八尾市には様々な人権課題で市民活動があり、それぞれに学習プログラムを持ち実践しています。それらの多くもまた参加(体験)型学習の内容を持っています。昨年は、人権研修団体である人権啓発推進協議会や企業内同和問題研修推進協議会とこれら人権市民グループとで『世界人権宣言八尾市実行委員会』が結成されました。これは一面、人権学習を提供できる市民グループと人権研修に取組む市民団体が合わさったと言え、「市民による市民のための人権学習活動」が出来る大きな条件が生まれたと言えます。
このように、八尾市でも市民による主体的な人権学習が活発化しています。今後、企業や各種市民団体、地域のまちづくり活動に、こうした参加型人権学習を取り入れていただき、主体的な学びから主体的な行動が生まれる契機にして頂ければと思います。
(八尾市同和事業促進協議会 笠原 秀己)