児童虐待防止法とCAPプロジェクトやおの取組み 最近、新聞やテレビで、虐待による子どもの死亡ニュースを聴くことが多くなりました。1999年度に児童相談所に寄せられた子どもの虐待の相談処理件数は11631件、これは90年度にくらべて10倍の数字です。今まで表面に浮かび上がってこなかった子どもへの虐待が社会問題として認識されてきたとも言えます。昨年(2000年)5月には「児童虐待防止法」が成立し、日本においてもやっと、虐待問題に対する法的な取り組みがはじまりました。この法律で虐待とは、暴力などの「身体的虐待」、「性的虐待」、子育てを放棄したりする「ネグレクト」、子どもの人格を否定する「心理的虐待」が含まれています。教師や医師などは子どもの虐待を早期に発見できる立場にあることを自覚し、早期発見に努めなければならない(第5条)、虐待を発見した者は「速やかに・・・通告しなければならない」(第6条)とし、この通告義務は守秘義務より優先されることとされています。また、保護者の親権を実質的に制限することで、虐待を受けている子どもに対して児童相談所が迅速な対応を図れるようになりました。一方、保護者以外の加害者は対象外にされたり、加害者に対する罰則規定がないなどの不十分点も指摘されています。この法律は施行後3年をめどに見直されることになっています。 さて、この法律で取り上げられた虐待だけでなく、いじめ、誘拐、痴漢と言った性暴力など子どもの周りにはさまざまな暴力があふれています。このような暴力を子どもが受けそうになった時、あるいは受けた時に自分自身を守るために何ができるかを、ロールプレイ(模擬劇、寸劇)の参加体験型学習で学び考える暴力防止プログラムの一つにCAPがあります。八尾でも1996年から「CAPプロジェクトやお」をつくり、現在、八尾市や、東大阪市、藤井寺市、柏原市などの各学校園でプログラムを実施しています。

 

CAPとは「Child Assault Prevention」の頭文字をとったプログラムで、1978年にアメリカのオハイオ州のレイプ救援センターで開発されました。小学校2年生の女の子がレイプされるという事件を契機に、フェミニズム運動の暴力に対する経験から開発されたのがCAPです。日本へは1985年にアメリカで実際にCAPの活動に携わっていたトレーナーの森田ゆりさんによって紹介され、現在では北海道から沖縄まで100以上の市民グループが各地で活動しています。

 

CAPのプログラムは子ども向けと大人向けワークショップ(参加体験型学習)2つに別れており、子どもワークショップには「就学前」向けと「小学生」向けがあります。また日本向けに改良、開発された「中学生/高校生暴力防止プログラム」もあります。

 

このCAPのプログラムには、わたしたち人間は一人一人かけがえのない存在であり、誰もがすばらしい内なる力をもっており、その力に働きかけ、引き出すというエンパワメントの思想がつらぬかれています。虐待や痴漢などの暴力にあった子どもたちは、親が暴力をふるうのは私が悪いから、痴漢にあったのは私にすきがあたから、いじめにあうのは私に何か原因があるのからと、自分を責め無力におちいりがちです。それに対してCAPでは、どんな子どもにも、かけがえのない『安心、自信、自由』の権利があり、それが奪われそうになった時、「いや!」と言っていい(NO)、いやといえない時には逃げてもいい(GO)、そして大切なのは信頼できる誰かに相談する(TELL)ことだと伝えます。子どもが暴力にあった時の具体的なスキルを伝えるとともに、「あなたはかけがえのない存在なんだ」という自尊感情を大切にしている人権教育プログラムといえます。

 八尾市においても年々CAPへの共感の声が高まり、プログラムの実施依頼が増えています。このような取り組みが各地で広がり、子どもをはじめとする誰もが安心して生きることのできる地域社会の創造につながることを私たちは願っています。

(CAPプロジェクトやお 李 福美)

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