地球市民として生きる
日本国際飢餓対策機構 清家弘久
―開発とは 2―
開発の目指すもの
開発が目指すものは、その国のGNPを上げることや、物質的に豊かになることではありません。真の意味で、そこに住む人が自らの可能性があることに気付き、コミュニティの人々が互いに協力し合って、生活そのものが変革されていくことです。
私達のプロジェクト地のひとつであるドミニカ共和国であったことです。そこでは小規模融資プロジェクトを行っていました。銀行からお金を借りることができないような貧しい人々に対して、融資を行って商売などをすることによって元金を返してもらうものです。日本円で一万円ほどのお金が、現地では小さな店を1軒持つことができるのです。
ひとりのお母さんが、そのお金で大きなたらいや洗濯板を買って、クリーニング屋さんをはじめました。彼女の人柄もあって仕事は順調に進み、元金も返すことができました。彼女の子どもも栄養改善がなされて、数ヶ
月前とは見違えるほどに血色もよくなり、学校にも行くことができるようになりました。これだけをみれば、このプロジェクトは大成功です。そして支援者の方に「みなさんから頂いたお金でこんなに人々の暮らしが変わっていきました」と報告ができるでしょう。
しかし、1年後私達のスタッフが、この女性の家を訪ねたところ、子どもたちの様子が1年前と変わっていないことに気がつきました。そこで、スタッフが彼女にその原因を問い詰めてみると、順調に進んでいたクリーニング業でもうけたお金を使ってアルコールを買い始め、酒に溺れてしまい、子どもたちに十分な栄養をやることができず、以前と同じ生活に戻ってしまったというのです。
人の心の変革がなされなければ、いくらお金を投資してよいプログラムを行っても、結局は元の木阿弥になってしまうことが現場ではしばしば見受けられるのです。ですから、どれだけ投資をしたか、どれだけ援助したかではなく、どれだけ人と関わり、そのひとりひとりの心の変革が行われたか、自らの意思で今の状況を打破しようとする人々がどれだけ起こされたかが、開発に携わる者として最も注意を払わなければならない点なのです。
開発とは英語でDevelopmentです。Envelopeとは封筒を意味し、外にあるものを封入することを言います。しかし、Developmentは内にあるものを外に出すことを表します。その意味で、開発が目指すものは、人が自分の可能性に気付き、その可能性を生かして他者を助けていくことができるまで成長していくことなのです。
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